右目が動かなくなってほぼ一ヶ月になるのだが、状態はあまり変わらない。そして原因は不明だ。
この一ヶ月は眼筋麻痺を引き起こすとされる、よりシビアーな原因を除外する為の検査に費やされた。
脳神経外科的には脳腫瘍、脳内出血、血栓、動脈瘤、くも膜下出血などの有無をCTスキャンやMRIにより調べたが結果は何も検出されなかった。そのことにより神経内科に回され、そこではウェルニッケ脳症、膠原病、甲状腺機能障害、重症筋無力症、多発性硬化症などの有無を血液検査、試薬テスト、造影剤投与によるMRIなどにより調べた。しかしどれもシロだった。原因が特定できないのだ。
それで原因不明の突発性眼筋麻痺ということになり、現在メチコバールとビタミンB1を処方され様子見の段階だ。
眼科医の所見では、初期の頃に比べ右目単独では幾分外側にモノが追える状態になってきているという。しかし前回紹介した私の作った装置においては、二つの像を一つに融像できる距離が25cmから40cmに伸びたものの、やはりそれ以上離れると押しピンは二つになり、一本の赤いラインはV字を描き遠くに行くほど離れていくのだ。
私の両眼視機能は現在40cmが限界といえる一方、初期の25cmから40cmに改善したともいえる。少なくとも悪くはなっていないのだ。
しかし両眼視で外には出られない。真っ直ぐ伸びる道路のセンターラインは相変わらずV字を描き、遠くに行くほど離れていくのだ。つまり一本の道路が二手に分かれて見えるのだ。そしてこの二つの道路は無限遠に向かい、遠近法とは逆にどんどん離れていくように思える。
…ならば、月はどのように見えるのだろうか。
月は地上に見えるあらゆるものと比べて途方も無く遠方にある。その距離に比例して二つの月は地上に見えるどんなものよりも離れて見えるのだろうか。
そうしたことを思い立ち、私は涼やかな夜風に吹かれ月を探した。
結果は否である。前方約100mの距離にある信号機の赤い円とその上に輝く月は同程度しか離れていなかった。つまり逆をいえば両眼視による遠近感は実際の距離とは無関係であるといえるのだろう。遠近感が生じるのは実際の距離ではなく、視差、右目と左目の像の違いによってでしか生じない。
これはよく考えてみるとあたりまえのことだ。100m遠方の信号機と月の左右の目の情報はほぼ同じであるから遠近は同じところで固定されている。
以前私は左右の目が100m遠方の鉄塔を如何いうふうに捉えているのか見比べたことがある。手で左目を遮り鉄塔を見る。次に右目を遮り鉄塔を見る。それを交互に繰り返すと鉄塔がある間隔を持って左右に移動しているのが解る。この移動する間隔はもっと遠方の月でも同じだった。この間隔は左右の目の物理的位置に由来し、両眼視することにおいて脳はこの間隔を消去する。これが融像というものなのだろう。つまり両眼視は鉄塔であろうと月であろうと同じ分量の機能によってなされているといえるのかも知れない。現在私の右目はその機能が滞っているのだ。
従ってセンターラインのV字は道路の無限遠である消失点以上には広がらないということであり、月もその間隔に従う。
しかし問題は私の現在の両眼視機能は40cmが限界であろうと、その40cm以内は正常だという点だ。そしてその時、赤い一本のラインはV字というよりも厳密には押しピンを中心にX字を描くように見えるということだ。
正常な両眼視機能の持ち主は是非この実験をやってみて欲しい。赤い一本のラインはX状に見えるはずだ。つまり真っ直ぐ伸びる道路に立ち、視差が生じるセンターライン上の10m以内の一点を見詰めれば、センターラインはX状に見えるということだ。
つまり人間の極自然な見え方においては、遠近法は決して導けないということだ。
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