右目の眼筋に麻痺が生じて二ヶ月と三日という時間が過ぎた。
 顔の中心寄りに固定されていた右目は、一ヶ月を過ぎるあたりから徐々に動くようになり、今ではかなり外側まで対象を追えるようになった。
 当初、「画家と斜視」で紹介した手作りの計測装置では、対象を融像できる距離は25cmが限界だったのだが、今では2m~3m位まで伸びた。
 つまり、右目と左目が見た一つの同じ物を、一つの物として見ることが出来る距離が25cmから2、3mに伸びたのだ。しかしそれ以上遠方だとやはり物は融像出来ず、二つにだぶってしまう。いわゆる両眼性複視の状態だ。

 従って2、3mの距離内において私の目は正常な両眼視機能があると言え、屋内にいる分には差したる支障はなくなってきた。以前は外出はもちろんのこと部屋にいるときも右レンズを黒く塗っためがねをかけ、右目の情報を遮断していた。でないと一歩も歩くことが出来なかったのだ。つまりこの人相の悪いめがねの使用から室内にいる限り逃れられるということだ。

 しかし外に出ると世界は一変する。

 この不思議な風景はフォトショップで比較的容易に再現出来る。

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 毎朝散歩する美術館の中庭から見た平安神宮の大鳥居だ。毎朝この地点に立ち、例のめがねをはずし大鳥居を眺めるのだ。
 一ヶ月前までは、この左右の大鳥居は大鳥居3個分位を空け離れていた。それが大鳥居の一部が接触するまで縮まってきている。

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 真っ直ぐに伸びるセンターラインなどは遠くへ行くほど離れて、Vの字を描く。これは以前とあまり変化がない。変化といえば交わるVの起点が幾分前方にずれ込んだことくらいか。

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 細い小道を行くと前方が路肩で塞がっているように見える。
 これが私が見る不思議な風景だ。
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 診ていただいている第二日赤神経内科のM医師は府立医大病院の神経眼科S医師宛に紹介状を書いてくださり、昨日受診に行って来た。そこで興味ある複視測定テストを受けた。

 通された小部屋には1.5m四方位のパネルがあり、その前方約80cmに顔を固定する器具がある。その器具に顔を固定し特殊なめがねをかける。そのめがねの右側は赤いフィルターが嵌り、左は緑のフィルターが嵌っている。部屋を暗くしパネルの中心に直径1cm位の赤いマルが点灯される。次に手に持たされたレーザーポインターでその点灯した赤いマルにぴったり重なるよう照射するよう指示される。そのポインターは同形のマルが照射されるがただし色は緑である。
 そして視野に広がるパネルに赤いマルが一個づつ点灯され、手に持ったポインターの緑のマルでそれを重ねていくのだ。

 つまりめがねのフィルターにより、赤いマルを見ているのは左目であり、ポインターの緑のマルを見ているのは右目だということになる。そこで赤と緑のマルの客観的ズレが私の眼筋の部位の異常となる。
 その測定は以下のチャートで数値化される。この測定機器をヘスコオルジメーターといい、得られたチャートをヘスチャートというのだそうだ。

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 チャートの一枡は5度を表し、5度以上内側にずれると異常とされる。私の場合、中心から耳側に30度の地点で内側に5度以上ズレがあり、それ故外直筋の異常が認められる。

 S医師はこのチャートが示す異常は極軽微なものだと言う。
 しかしヘスコオルジメーターの測定には距離の要素が全く考慮されていないのではないか。
 私の場合は1mの距離では融像できるが、5m先では融像できないのだ。つまり近距離では複視は現れないが中遠距離では現れるのだ。それが現在の私の状態だ。

 両目を寄せることを輻輳といい、逆に離すことを開散というのだそうだ。この場合、開散というのは輻輳の緩和なのか、あるいは別の力によるものなのか。そして開散不全、開散麻痺というのもあるというからややこしい。
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ネコのミモロさんのブログで当工房を紹介していただきました。ありがとうございました。
http://blog.goo.ne.jp/mimoron/e/3f6a9c0a37c5a0148cca17e6124f86f5

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.<関連記事>
画家と斜視 
http://manji.blog.eonet.jp/art/2013/05/post-fd99.html
眼筋麻痺で月を見る  http://manji.blog.eonet.jp/art/2013/06/post-b1b5.html
不思議な風景 http://manji.blog.eonet.jp/art/2013/07/post-1d90.html 

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