「箱庭の提案」と題した作品は今までに三つあります。
 1999年の小西煕氏との二人展において出品した二作と2014年の工房の箱庭です。前者は100×60×60cmで後者は2.5坪です。

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 今回、そのシリーズとして最も小さい15×20×4.5cmを作るにあたり、その作業工程を仔細に記録しようと思い立ちました。
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 小さな領域に幽玄を見出すという考えから、初めは箱から作ろうと考えていたのですが、近所の百均で以下のような木製の箱を見つけました。

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これが15×20×3.5cmの箱ですが、これを二つ重ねれば蓋つきの箱になり、蓋を開ければ幽玄が垣間見える、…というアイデアがとてもいいものと思いました。
 この箱を見つめ、構想したのが以下のエスキースです。

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エスキースは他にもあったのですが、ここは無難にエスキース2を採用し、早速作業に取りかかります。

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これらがこの作品の素材の全てです。
まず3mmのべニアをカットし、蓋のガイドを作ります。

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 これで二つの木箱は蓋と本体の一つの箱になります。

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   本体に目止めとガムテープでをこぼれ止めを作ります。
 箱全体に養生テープを貼り、汚れを防止します。これを養生といいます。

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箱の内側に海、あるいは雲海のレベルをマークします。

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これに発砲ウレタン30倍を注ぎます。

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調合カップに主剤と硬化剤を注ぎ、攪拌すると、まもなく発砲が始まり30倍に膨れます。漆芸などの乾漆の基材によく用いられます。

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10分程置き、ガムテープを取り除き、のこぎりでカットします。このレベルが三つの山の一番高い山のトップになります。

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山の部分の見当を付、残りの部分をのこぎりやカッターナイフで排除し、グラインダーで先ほどマークした海、あるいは雲海のレベルまで削り取ります。

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マークのレベルに達すると三つの山の形をグラインダーや紙やすりで整えます。

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油性サインペンで出来上がりイメージを起こし、波紋の部分を成型します。

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 この基材ベースを樹脂で覆います。乾漆なら漆の堅地になるのですが、この場合、合成樹脂のポリパテ(ポリエステルパテ)を用います。

 しかしここでアクシデントがありました。使用を考えていたポリパテの主剤が変質していたので、急きょそれに変え、エポキシ206にボローニア石膏を練り込んだものを使います。ポリパテは硬化後、柔らかいので成型が出来ますが、エポキシは非常に硬いから成型出来にくいという難点があります。

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塗終わると熱を加えます。80度30分くらいで硬化します。

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硬化後、エスキースを参考に黒をいれます。黒はカシュ―の顔料タイプを用います。

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黒が乾いてからカシュ―のネオクリアーを塗ります。これで陶器のようなテクスチャーが出来ます。

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養生を解き、箱にアクリル艶消しの黒を塗り完成です。

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 正に箱庭です。

 タイトルは「箱庭の提案vol.4〜三つの山問題」とします。三つの山問題とは以前取り上げたピアジェの主客分離に関する問題です。それと同時に、これを送る若いご夫妻の趣味がコアな登山、山歩きだからです。

 気に入ってもらえればいいのですが。

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