疾風の妙

 何気に古いスケッチブックを眺めていると、いつものように一つのドローイングに目が留まる。それは疾風にからめとられた人物を描いたものだ。

疾風

 それは2003年、つまり14年前の夏に描いたものだが、これを見るたび、その頃の大変さ、あるいは自分の無力さが蘇ってくる。
 その頃、町屋を舞台にしたグループ展と、少し大きめの文化博物館ギャラリーでのグループ展を抱えていた。そしてそれに加えて、あろうことか敗血症に陥った母親が、無菌の集中治療室で機械に生命を維持され、意識が戻らぬまま、ベットに横たわっていた。
 携帯が鳴るのが怖かった。仕事場、自宅、アトリエ、出先の現場、運転中、布団の中、時間、所かまわず、幾度も携帯が鳴った。「危篤です。直ぐ来てください。」
 最後に集中治療室から電話があったのは、真夜中の2時頃、京都に大きな台風が襲った正にその最中だった。
 待機していたといえ、妻と娘、父親を乗せた車はガレージを出た直後、暴風雨に掻き消された電柱にぶつかった。その時、風の音と重なった酷い耳鳴りを記憶している。
 病院に着き、案内されたのは集中治療室ではなかった。彼女は既に生命維持装置から解放されていた。その後、しばらくして妹夫婦が駆け付けた。
 妹の要望通り密葬をし、本葬をお盆明けに伸ばした。そしてその時に描いたのがこのドローイングだ。
 町屋の作品は搬入していたが文化博物館ギャラリーの作品は未完だった。しかし出てくるイメージは疾風にからめとられた人物、疾風とともに逝ってしまった人物というイメージ以外には何も出てこなかった。
 棄権することも考えたが、このイメージを作品にし、発表すべきだと思った。しかし出来上がった作品は惨憺たるものだった。
 このドローイングを見るたび、もう少し、ましな作品にしようという思いが沸き起こる。因みに母の名は妙子という。

疾風の妙1

 このドローイングのキモは疾風のタッチの勢いだ。この疾風と人物を合体させれば、いわゆる、マンガでいう動線になる。

疾風の妙2

 女性がオートバイか何かで疾走する。これを本画に起こす。バックは前回同様、金箔を施す。

疾風の妙3

疾風の妙4

疾風の妙5

 やわらかい鉛筆で図を衝立に写す。

疾風の妙6

疾風の妙7

疾風の妙8

 木炭で下書きした上に筆で墨を入れ、イメージを定着させる。

疾風の妙9

疾風の妙10

 糊を施し、金箔を置いていく。今回は膠ではなく、つい先日、久しぶりの現場仕事で用いたスパーワニスを使う。乾きが遅いから作業性がいい。

疾風の妙12

 金箔と図の際を起こす。

疾風の妙11

 前回同様、図にモデぺとジェッソである程度のボディを作る。

疾風の妙13

 動線を付け色をのせていく。リキテックスのアクリルカラー使用。

疾風の妙14

 女性の表情を整える。

疾風の妙15

俳句×美術1
俳句×美術2

障壁画「疾風の妙」は篠山鳳凰会館で展示予定です
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